民話の中には、今に通じる心情が描かれたものがある。
これらは山姥や鬼、妖怪の姿を借り、ひとの心の奥底にある本音を暴き出す。
そこで、こういった昔話をもう一度書き直してみることにした。
※未公表作品が多いので、東北地方の媒体からのリクエストをお待ちしています。
岩鷲山(岩手山)
芦名橋 早坂ノボル 平成18年 『姫神雪しぐれ』所収
◆著者による紹介文◆
本作は『姫神雪しぐれ』(文芸社、平静18年)に収録した短編小説である。
同著は、岩手県央から少し北の風土や文化を踏まえた物語が出来ないかと考え、地元に根付いた素材を利用した作品を集めた短編集となっている。
地味な作風で、発行当時は大して売れなかったが、いまだに毎月、リクエストが来る。
既に絶版であり、さすがに入手は困難なので、少し手を入れ、ここに添付するものとした。
◆あらすじ◆
文政年間、南部(盛岡)藩での話である。
馬場街の芦名橋の袂に住む利助が嫁を世話して貰うことになった。
その嫁の名はお末と言ったが、夫婦で仲良く働き、子宝も授かった。
娘の名はお新と名付けた。
家族で仲良く暮らしていたが、奥州一体を飢饉が襲った。
文政を越え、天保年間に入っても飢饉が続き、ついに餓死者が出るまでになった。
女房のお末は死すが、利助は「どんなことがあってもお新のことを育て上げよう」と決意する。しかし、飢饉は断続的に発生し・・・。
『芦名橋』 → 本編はこちら(クリック)
海濤 ─民話「魚の女房」より─ (未公表)平成27年
◆著者による紹介文◆
本作は未公表作品である。北奥地方の媒体に寄稿しようと思ったが、相手先が見つからなかった(要するにボツ原稿)。
この物語は、岩手県雫石地方の民話『魚の女房』を翻案したものだ。
構図としては『鶴の恩返し』によく似た内容となっているが、こちらの方が「田舎臭い」味わいがある。
◆あらすじ◆
漁師が網に入った魚を不憫に思い、命を救ってやった。
すると、数日後に、漁師の家をひとりの女が現れた。
女は病気だったので、漁師が休ませてやったが、幾日か経つと、女は漁師の妻になっていた。
この妻は料理が上手で、この藩の家老がわざわざ足を運んで食べに来るほどだ。
そのおかげもあり、漁師はとんとん拍子に裕福になって行く。
しかし、漁師にはひとつの疑問があった。
それは、女房が「けして厨房を覗いてはダメです」と、料理をするさまを見せようとしなかったことだ。
ある日、漁師はついに我慢できなくなり・・・。
『海濤』 → 本編はこちら(クリック)
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