◆著者による紹介文◆
本作は未公表作品である。長編ということもあり、まだ買い手がついていない。
元々、『隠し砦の三悪人』のような侍の活劇を「奥州を舞台にして書けないか」というコンセプトで書いたものだ。
時代は天正の半ば頃(一五八〇年代の初め頃)。舞台は「野猿峠」という架空の場所で、鹿角大湯の東の「どこかにあった」という設定となっている。
登場人物は、主人公である「盗賊の赤虎」と、利江(『島の女』の鬼女)、二人の子である巖徹、鹿角の大湯四郎左衛門らとなっている。
悪役は「猿(ましら)の三次」で、後に怖谷で赤虎に復讐を企て、そこで倒されることになる盗賊である。三次は巨大な白猿を自在に操る。
物語のベースは「大湯四郎左衛門の大猿退治」の伝説に拠っている。
◆あらすじ◆
時は天正時代(戦国末期)のこと。
盗賊の赤虎が鹿角を訪れる。赤虎はそこで侍たちに囲まれるが、その侍たちが捕縛しようとしていたのは別人であった。
その頃、鹿角では盗賊団による人攫い事件が多発しており、赤虎はその一味と間違われたのだ。
この捕縛を指揮していたのは、鹿倉館主の大湯四郎左衛門である。
四郎左衛門によると、その人攫い一味は、「猿(ましら)の三次」が率いてい盗賊団である。
三次はその異名の通り、猿の大群を自在に操る男であった。
三次が従える猿は一千頭にも及ぶ。
その猿の中には、身の丈八尺を超える大猿がいた。
赤虎は四郎左衛門に加勢を求められるが、一度は「俺には関わりが無い話」と断る。
しかし、赤虎が好むと好まざるに関わらず、次第にこの事件に引きずり込まれていく。
猿の三次は、野猿峠を本拠としていた。
赤虎が峠を訪れると、峠の入り口に櫓が組まれていた。
その櫓の上には人の生首が並べられていた。
これは「これより先に立ち入れば地獄を見るぞ」という標(しるべ)で、地獄の門を模したものだった。
さて、この時より五年前に、赤虎は奴隷として船に乗せられた事があった。
この時、赤虎はその島に棲む鬼女・利江と夫婦になり、その鬼女を孕(はら)ませた。
それから年月が経ち、利江は赤虎の近くに来ていた。利江は里と名前を替え、飯屋の下働きとして働いていた。利江は我が子に、実の父親をひと目だけ見せるため、奥州鹿角郡を訪れていたのだった。
しかし、赤虎が自分の息子の存在を知る前に、息子(厳徹)は三次一味に攫われてしまった。
そこで赤虎は、息子・厳徹を取り返すべく、大湯四郎左衛門の猿退治に加わり、利江や仲間と共に、「獄門峠」に乗り込んでいくのであった。
『獄門峠』 本編(冒頭部)はこちら(クリック)
「大湯四郎左衛門の大猿退治」は夏祭りの山車の素材として使われますが、由来はそれほど知られていないのではないかと思われます。北奥地方よりのリクエストをお待ちして居ります。